声優 山寺 宏一(やまでら こういち) さん

山寺宏一さん

プロフィール

1961年 宮城県生まれ。アクロス・エンタテインメント所属。 大学卒業後の1984年、声優を志して東京俳優生活協同組合の養成所に入所。修了後の1985年にアニメ『メガゾーン23』でデビュー。 以後、声優としてアニメーションや外国映画の吹替えはもちろん、バラエティ番組の司会、ラジオのDJ、映画・ドラマへの出演、歌手としてアルバムをリリースする等、幅広く活躍中。

主な出演作品

【外国映画吹替え版】
『マスク(ジム・キャリー)』『ファイト・クラブ(ブラッド・ピット)』
【アニメーション】
『それいけ!アンパンマン(チーズほか)』『カウボーイ・ビバップ(スパイク)』
【映画】
『二十世紀少年最終章 ぼくらの旗(コンチ)』『みんなのいえ(青沼菊馬)』ほか

新企画【KOEOTO】。記念すべき第一弾は山寺宏一さんのインタビューをお届けします。今や声優という枠を超え、タレントから俳優までマルチに活躍されている山寺さん。そのパワーの源は「演じること」への限りない情熱にありました。

ロビン・ウィリアムズとジム・キャリー

この世界に入った動機と、心に残っている役柄は?

もともと人前で演じることが好きで、学生時代は落語研究会に入っていました。そこから声で演じる仕事を志すようになり、俳協の養成所を経てデビュー以来、早いものでもう27年になります。初めて役をもらったのは1985年制作の『メガゾーン23』というOVA作品でした。主人公の友人役で、台詞は二つだけでした。
一番思い出深い役柄は、やはりディズニーアニメ『アラジン』の魔人ジーニーの役です。劇場版・TVシリーズ・東京ディズニーシーのアトラクションなど、日本でのジーニーの声は全て演じさせていただいています。ご存知のようにオリジナルの声優はロビン・ウィリアムズで、本当に芸達者な俳優です。元コメディアンなのでとにかく早口で、物真似も上手い。それを日本語で再現するのに、とにかくありとあらゆる声を出しました。この辺は自分の武器だと思っていますので、それを発揮したんです。その後、英語のネイティブで日本語もわかるバイリンガルの方から「オリジナルに遜色ない吹替え」と褒めていただき、とてもうれしかったのを覚えています。また、ロビン・ウィリアムズという人は物真似が得意で、ジーニー役でもいろんな人物のパロディをやるのですが、その対象が必ずしも日本では馴染みのない場合もありました。例えば向こうのCMやニュースキャスター等、日本では元ネタがわからないからそのまま真似ても面白くないわけで、その場合どうやるかを現場で考えました。自分でも「こんなのできます」とアイデアを出して、ギャグを翻案していったのです。大変だけど楽しい現場でした。

ほかにも思い出に残っている作品はたくさんありますが、苦労したという点では『マルコムX』で主役のデンゼル・ワシントンを吹替えたことです。黒人過激派のリーダーなので、とにかく全編が激しい演説シーンで、最後まで声が持つか心配でしたが、結果的に良い作品になって安心しました。それから何と言っても『マスク』のジム・キャリー。機内版・ビデオ版・放送版の3バージョンとも自分が演(や)らせていただきました。ジム・キャリーは同年代ということもあり、本当に好きな俳優なので、これからも演じていけたら嬉しいですね。

「あ、そういえば日本語だったな」と思わせたい

様々な役を演じられてきたわけですが、今後吹替えてみたい俳優は?

これから吹替えてみたい俳優は他にもたくさんいます。とにかく、誰でも演(や)ってみたい。いま、ハリウッド発の映画情報番組でナレーションを担当させていただいています。そこで紹介される新作を見ていると、本当に吹替えたい作品ばかりです。特にコメディ作品は日本ではなかなか当たらないので、本国でヒットしても日本では公開されないものが沢山あります。そういった作品も、是非演(や)ってみたいと思っています。『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』に出ていたザック・ガリフィアナキスの捉えどころのない面白さとか、自分で監督しながら男性はもちろん、おばさんの役まで自分で演じてしまう黒人コメディアンのタイラー・ペリーとか。
そして、もうひとつ挑戦してみたいのが、クラシックの名画を吹替えること。『ローマの休日』のように、往年の名作で吹替え版も素晴らしい作品があります。それに匹敵するものを自分もぜひ残したい。以前、『ゴッドファーザー』のアル・パチーノを演(や)らせていただきましたが、この年齢になった今、今度は『パート2』のロバート・デ・ニーロの方を出来るんじゃないか、とか。今の自分の年齢になって、やっと演じられる役というのがあると思います。その意味で、吹替えたい作品はもう無限にありますね。

映画における「吹替え」はとても重要な要素だと思います。そもそも映画は「映像」と「音」で出来ているわけで、その「音」の部分を全面的に担うわけですから。どんなにオリジナルの俳優が素晴らしい演技をしていても、それを声優が台無しにしてしまうことはある意味簡単です。でもより良くするのは難しい。その意味でも声優の責任は重大だと思います。
一方、アニメの場合は吹替えと違い「オリジナルの音」が無いので、自由である反面、難しいですね。ただその分、ゼロから演技プランを考えて、現場で共演者やディレクターと作り上げていく楽しさがあります。自分の役どころを読み込んで、しっかり演技をすること。想像力が大事ですね。

僕が吹替えで目指しているのは、視聴者が「吹替えである」ことを意識しないで見られるような作品。見終わってから「あ、そういえば日本語だったな」と気がつくぐらいがいいと思うんです。誰が声を演じているのか気にしないで見てもらえたら最高ですね。でもその一方で、この作品では誰がどの役を吹替えたか、というデータはちゃんと記録しておいてほしい、という気持ちもあります。この辺はジレンマですが。最近はデータ放送という便利なシステムもあるので、声優やスタッフのクレジットが全部その場で表示できたりするようになれば嬉しいですね。

選ばれた以上、最大限の努力を

山寺さんにとって「吹替え」の真髄とは何でしょう?

声の仕事をするうえで意識しているのは「とにかく楽しまなければいけない」ということ。ベテランの声優の方から、昔の現場では「共演者にいかに受けるか」が大事だった、とよく聞きます。その現場の楽しさを内輪受けで終わらせずに、キチンと視聴者に伝えることができれば最高ですね。今は自分もそれなりの年齢になってきたので、率先してそういう現場を作りたいと思っています。やはり本番が一番楽しいですから。家で台本をチェックするのは大変ですが、その結果を共演者やスタッフの前で演じてみて、反応が返ってくるのは本当にうれしいです。褒められると張り切るタイプなので(笑)。その分、反応が薄いとすごく凹みます。

自分では、「これが山寺宏一のキャラだ」というのはないと思っているので、だからこそ、難しい役を振られて「山寺なら何とかするだろう」と言われるのはうれしい。自分のどこが買われたのか、共演者の方とも探りながらいろいろやってみて、ディレクターの期待以上のものを出したいですね。なかなか難しいけれど楽しい作業です。今は声優の数も多いし、声優以外でも俳優の方や、極端な話、全くの素人の方でも「声を入れる」という作業自体はできるわけです。その中から自分が選ばれた以上、最大限の努力をして期待に応えたい。当たり前ですが、一番大事なことだと思います。

吹替えというのは、ある意味で無理な仕事だと思うんです。外国語の口の動きに日本語を合わせるのは、絶対に完璧にはいかない。それを専門職としてやる以上、役者にできることは良い芝居を最適なタイミングで演じることだと思います。
そうやって作った吹替え作品を見てくださる皆さんには、心から感謝しています。ぜひ作品を御覧いただいて、その感想をどんどん発信してください。気が小さいのでけなされると凹みますが(笑)。そうやって吹替え版に注目が集まっていくのは、業界にとってもプラスになると思います。そうしたファンの皆さんの声に応えられるよう、これからも努力していきます。

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